インタビュー

スペシャルインタビュー vol.2 長峰菜穂子(陶芸家)

果てない空インタビューcamera
このブログでは有名無名問わず高い志を持った方々のインタビューも掲載していきます。
第2回目はおしゃれな女性に大人気な陶芸家・長峰菜穂子さん。長峰さんの作品のこと、どうして陶芸家になったのか。そんな疑問をぶつけてみました。

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長峰さんの変わりにモデルになってくれた猫ちゃん。長峰さんのアトリエを寝床にしているそうです。カメラを向けるとカメラ目線をくれる当たり…アイドルです!!

 

 第2回 長峰菜穂子(陶芸家)

武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科陶磁器科卒業。茨城県笠間焼窯業指導所釉薬研究科終了、青年海外協力隊参加、フィリピンにて陶芸指導。アトリエ線路脇に築窯。長峰さんの作品の特徴であるアンティークのような作品はおしゃれな女性からの支持が厚い。個展を開けば、行列ができ、売り切れることも多い今一番注目されている若手陶芸家。

おばあちゃんになっても続けていけたらいいなって思いますね

ー長峰さんが陶芸を始めたいきさつを教えて下さい。

「大学生の頃に陶芸を専攻していました。大学の1、2年でテキスタイル、木工、陶芸、デザイン…ひととおりやるのですが、3年で陶芸を選択しました。3年、4年と2年間やったのですが、全然思いどおりにいかなかったので、もうちょっとやってみたいなと思って。それでなんの知識もなく東京に近い笠間焼の窯元さんで修行も兼ねて3年間働IMG_1062.JPGいていました。最後の半年間は笠間焼の指導所の方で釉薬(焼き物の上薬)のことを一通り勉強しました。」

ー小さい頃に陶芸をやりたいなって思ったことはなかったんですか?

「小さい頃はまったく。ただ絵を書くことが好きで、ずっと絵を書いていたいなと思ってその流れで美術大学に進んだので。あと手を動かして物を作るのが好きだったんです。」

ー絵はお得意で、でも思い通りにいかなかった陶芸の方に進んだのはなぜですか?

「絵もすごく好きでしたし、得意だったんですが、陶芸はうまくいかないからこそもうちょっとやってみようかなって気にもなったし、絵って2次元ですけど、焼き物は3次元なので手で立体を作っていく感じが楽しくて。あと道具がいらないところがいいなって思いましたね。極端な話、手でそのまま形が作れるので。自分の手さえあればできるというところに惹かれました。でも隣で一緒にやっている金属の子はそれが嫌だったみたいですけどね。彼女も美術大学だったんですが、同じような過程をたどってはいるけれど結果、陶芸を専攻しないで鉄を選んだのは、焼き上がってまったく違うものになってしまうのが嫌なんですって。思い描いたものと全然違うものが窯からでてくるのが「あ、もうダメだ!」って思って(笑)。鉄だと自分でこう思い描いた形にきっちり作れて、できあがりも自分で思い通りにできるので。」

ー長峰さんは今でも思い描いてたものと焼き上がりって全然違うものがでてきたりしますか?

「違いますね。まだまだ思い描いているものとは…。」

ーでもそれが楽しみだったりしませんか?違うものができるのが。

「そういう時もありますけどね。でもそんなのは100のうち1つくらいで、だいたいががっかりって感じです。他の人がみてもあんまりわからないかもしれませんが。」IMG_1063.JPG

ーだからこそ次のは!って発奮したり?

「そうですね。次はもっと!ってなります。」

ー先程お話にも出ましたが、和紙の方、金属の方と3人の作家さんが一緒にアトリエをやってらっしゃるんですよね?全然ジャンルも違いますし、大学も違うみたいなのですが、どういういきさつで3人でやろうってことになったのですか?

「同級生なんですね。和紙の子が高校からの同級生で、和紙の子と鉄の子が大学が一緒で。で、3人でアルバイトが一緒だったんです。学生時代、イタリアンレストランで。それからみんな家も近いんですよ、この辺りに住んでいて。だから付き合いは学生のころからなんですよ。もう10数年。」

ーそれで一緒にアトリエやろうよってことになったんですか?

「彼女は東京に出たり、私も笠間に行ったり一度地元は離れたけれど、なんとなく同じタイミングでみんな戻ってきたので。ちょうど私も作る場所を探していて。このアトリエは和紙の子のお家なんですね。オーナーさんが和紙の子のお父さんなんです。それで貸してもらえることになったので3人でやり始めた感じです。」 

ーこのアトリエ線路脇というのは誰がつけたのですか?とってもストレートだなと思ったのですが(笑)
(アトリエは線路脇にあります。インタビュー中、何度も電車が通りました。 

「友達ですね。3人じゃないんです。全然関係ない友達が線路脇にあるから線路脇でいいじゃん!って(笑)」

ーそうだったんですね。なんとなく気になっていたんです。もうアトリエを構えてからは陶芸家として順調でしたか?

「いやいや、もう全然。売れ始めたのはここ最近なので。ここ最近食べて行けてる感じです。ここ3、4年ですね。」

ーそれまではアルバイトをしていらしてたのですか?

「はい、アルバイトをしていました。陶芸教室でスタッフのアルバイトをしながらここで作ってましたね。それでだんだんアルバイトとの両立が難しくなってきて辞めました。」

ーフィリピンにも行かれてたんですね。

「アトリエをやる前に2年間行ってましたね。職業訓練校があってそこで教えていました。地場産業としてお土産を作って少しでも収入になるように。近くのセブ島のような観光地で売れるキャンドルフォルダーとか作ってました。陶芸家とは全然違いますが、いい経験にはなりましたね。」

ー長峰さんが陶芸家になってよかったことってなんですか?

「いろんな人に会えることですかね。お客さんもそうですし、ショップの方もそうですし、同じ陶芸家の方とか。クラフトフェアとかで「これどうやって作ってるんですか?」って話しかけられて交流をもてるっていうのが嬉しい。本当にいろんな方がいらっしゃいますね。」

ー逆に辛かったことってなんですか?

「やっぱり日々土まみれで、夏暑く冬寒く肉体労働していると丸の内OLになりたかったなぁとか思いますけど…(笑)窯だきは朝4時、5時くらいから焚いた

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りしますし、冬はなんでこんなことやってるんだろ〜とか思ったりします…。」

ーできあがった焼き物とか運ぶのも重いですよね?

「そうですね。土とかも重いですし、基本、肉体労働ですよね。ろくろひいて作ってるのなんてほんの一瞬です。ほぼ土作りしたり、重いもの運んだり、水で洗ったりっていうのが私は8割くらいな気がしているんですけど。」

ー準備が大変なんですね。女性は大変ですね。

「大変ですよ、腕力ついちゃって。手も荒れちゃいますね。冬は赤ぎれしちゃって痛いですし。まぁどんな仕事でも大変だと思いますけど。」

ー長峰さんって何度も個展を開かれていますが、個展ってどうやって開くんですか?

「売れる前からいつも常設で置いていただいてるショップさんがあるんですが、そちらのお店から「今度個展どうですか?」って言っていただいたり、クラフトフェアに出したときに声をかけていただいたりとか。」

ー1番最初の個展のことって覚えてらっしゃいますか?

「今はなくなっちゃった東京の古道具屋さんで「個展させて下さい!」って自分から持ち込んだんです(笑)」

ーすごい行動派ですね!個展を開くときってどれくらい作品を作るんですか?

「だいたい300から500くらいですね。そういう個展前は窯だきは朝早いので、工房で寝泊まりしたり、忙しく焼いてますね。焼かないことにはどうにもならないのでね。」

ーそこまでできる原動力ってなんですか?

「やっぱり好きだからだと思います。作るのも好きですし、作ったものがお嫁に行くのも嬉しいし、喜んでもらえるのも嬉しいですし。だって作るだけで誰も買ってくれなかったら1人よがりでどんどん作品がたまってっちゃうし。そんな単純なものです。」

ーそれだけ作っても最近は個展を開けば売り切れ、お店に行列ができるほどなんですよね〜。

「でもそれはここ最近2、3回のことですよ。まぁなくなっちゃうアイテムも多いですけど。」

ーでは陶芸でこだわっていることはなんですか?

「釉薬って色々な原料を配合して作るんですけど、試し焼きをしてどれがいいか試して。古いヨーロッパの器が好きなのでそういう作風を目指して作っています。釉薬が一番変化が出しやすいのでこだわっています。」

ー土にはこだわりってありますか?

「今 は土にはそんなにこだわりはないんです。それをやり出すとすごい何万種類にもなってしまうし、釉薬も作ろうと思えばいくつもでもできてしまうから。 土にもいろんな種類があるので両方に手を出すとすごい数になるんですよね。とりあえず今は半磁器です。半分磁器で半分土ものに固定して、釉薬だけいろいろ 変えてるんです。でも土ももっと勉強していろいろ変えていきたいなって思っています。」

ー先程お話に出た古いヨーロッパの器ですね?その古いヨーロッパの器を作った作家というのは誰ですか?

「特定の作家作品でなく、ムスティエ窯などフランス、スペイン、イタリアの田舎の窯元で作られていた器です。今はもう存在しない窯元がほとんどです。最近ではその中でも18世紀~19世紀にかけていくつかの窯元で作られていたキュノワールというシリーズが好きです。他にも色々な好きな窯元やスタイルがあります。」

ー古いヨーロッパの器に惹かれたきっかけは何かあったのですか?

「陶芸には無い表情が好きで最初は古い小ビンやガラス、古木などを求めに古道具屋に足を運ぶようになり、そのうちヨーロッパなどの器に魅了されていきました。」

ーその器のどういうところに惹かれたのですか?

「日本の‘侘び寂び’にも通じる静かなエレガントさ、晒された白い表情が好きです。最初は、どこかのだれかの作品をまねするのは恥ずかしいことなのだと思っていました。自分独自のオリジナリティを、他のだれも作っていないようなモノを作ることに価値があると。でもそれこそ今思えば恥ずかしことで、何にも影響を受けていない自分オリジナルなどないのです。“写す”という古典に習うことを知り、ヨーロッパの古い器に出会い、今は習う事に夢中です。」

ー最後にこれからの目標をお聞かせ願えますか?

「続けることです(笑)おばあちゃんになっても続けていけたらいいなって思いますね。ルーシー・リーっていう陶芸家さんがいるんですけど、おばあちゃんになるまでやってたからできるんだなって思って…。」

ーおばあちゃんになってもできるお仕事って素敵ですね。長峰さんの作る作品は従来の陶芸のイメージとは違って女性が手元に置いておきたいかわいい器が揃っています。ご本人もやわらかい雰囲気が素敵な女性でした。来年始めにも個展があるとのこと。お忙しい中お時間をいただきありがとうございました!

 

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