スペシャルインタビュー vol.1 海口ゆみ(舞台女優)
果てない空インタビュー
このブログでは有名無名問わず高い志を持った方々のインタビューも掲載していきます。
記念すべき第1回は舞台を中心に活躍する海口ゆみさん。海口さんがなぜお芝居を始めたのか、舞台の魅力はなんなのか。そんな疑問をぶつけてみました。
第1回 海口ゆみ(舞台女優)
成城大学卒。卒業後会社員を経て演劇の道へ。
「ロミオとジュリエット」(乳母役)、「夏の夜の夢」(ヘレナ役)、劇作家別役実さんの「赤い鳥の居る風景」等に出演。その他、時代劇では花魁、女将などを演じる一方、巫女、老婆など存在が特殊な役も演じきることができる個性派女優である。
「すべては舞台を見て楽しんで下さる
お客様のために。」
ー海口さんの舞台は何度か見させて頂きましたが、どうしてこの道に進もうと思ったのですか?
「一度きりの人生を後悔したくなかったから。月並ですけど。やりたいことをやりたいと思ったからです。」
ー昔からこの道に進みたかったのですか?
「思えば昔から舞台は好きでしたね。幼稚園の時はマスクプレイミュージカル「劇団飛行船」さんの舞台が大好きで。あまりにも私が喜ぶので母が年間チケットを購入してくれたくらい。それから高校生になると歌舞伎が好きになって。1人でも歌舞伎を見に行ってました。セーラー服で劇場に行くので目立つんですよね。だから観劇にいらした年配の方々からすごく声をかけられて。「おばあちゃんと見にきたの?」「いえ、1人です」みたいな(笑)。学生だからお金がなくてすごい遠い席だったりするんですけど、近くの席のおじさんが最中をくれたりとか。おじさん達、本当は自分のお孫さんと見に来たいんだけど、お孫さんたちは興味がなくて一緒に来れない。そんな方々がかわいがってくれて。そういう交流も楽しかったですね。
それから高校の時は演劇部に入っていました。でも1回か2回舞台に立っただけで、衣装と
か照明係とかで。その時はみんなで1つのものを作っていくのが楽しかったですね。で、大学は普通に。演劇はやらずにそのまま就職しました。」
ーその時、演劇の道に進むことは頭になかった?
「できないと思ってたから。そういう選択肢が出てこなかった。」
ーでもそれから安定してるOLさんを辞めてお芝居を始めるんですよね?それはなぜですか?きっかけとかあったんですか?
「社会人になると甘いことだけじゃなく、大変なことも多いじゃないですか。その時、同じ時間を過ごすならやりたいことをやりたいと思ったんですよね。就職した会社はいい会社だったんですけどね。会社を辞めたかったわけじゃないですが、やりたいことをやりたいと思って。」
ーそれで会社をお辞めになって舞台女優の道に?先程高校の演劇部の話でも出てきましたが、女優さんじゃなくても照明さんとか衣装さんとかではダメだったんですか?
「目立ちたがり屋なんでしょうね(笑)。自分で舞台の上に立ちたかったんです。」
ー会社を辞めてすぐに舞台に?
「青二塾に入りました。声優さんの養成所なんですけど。塾長先生の方針でお芝居の基本を教えてもらえたんです。そして養成所を卒業して」
ー晴れて卒業されて念願の舞台女優さんの道へ。具体的にどうやって舞台に立つのですか?
「まずはオーディションを受けます。そうすると一緒にお仕事をした方とのご縁ができて、そこから広がっていく。そこで今度こういう舞台があるからってお声をかけていただいたりします。」
ーキツくないですか?
「キツいですよ(笑)。大変です。」
ー何が一番キツいですか?
「24時間稼働している感じがすることですかね。ちゃんと寝てるし、ご飯も食べてるんですが、頭にいつも芝居のことがあります。夢にも見ますし、稽古してる夢とか。でも大変だけど充実してます。あと舞台だけでは食べていけないので、いろんな仕事をしてなんとかやってます。」
ーそれは大変じゃないですか?
「大変ですけど自分で踏み込んだ道だから。あとやっぱり結局好きなんだと思う。好きじゃないとできない。」
ー働くことが?
「お芝居が。」
ーそこまでできる舞台の魅力は?
「お客さんがすぐ見てる目の前で芝居ができること。舞台って舞台の上じゃなく劇場で見てるお客
さんがいて初めて劇場全体が動き出すんですよね。お客さんが居てくれないと意味がない。うまくいけば笑い、だめだったらシーンとなる。反応がありますから。お客さんと一緒に作っていけるんです。それが一番の魅力。映画やテレビではできないことです。
例えば1つの公演で重要な台詞を忘れたり噛んじゃったりすると他の人がフォローする。同じ脚本の舞台ですが1回として同じ芝居じゃないんです。映画は何度見ても同じですよね。フィルムに残ってるから。でも舞台はその公演は1回しかない。一度として同じものは出てこないんです。」
ーなまものですもんね。たまに間違えたのか役者さん同士で笑ってたりしますもんね。
「それでまたお客さんも楽しんでくれたりとか。それも1度きりのものなんです。」
ー舞台に立つ上で一番心がけていること、大切なことはなんですか?
「いい影響を与えたいってことですかね。一段高いところから発信していくんだから楽しんでもらえるものを作りたい。いいエネルギーを感じてもらえたらと思います。」
ー最近暗い、救いようのない映画とかドラマとかたくさんありますけれど?
「それはそれで意味のあることだと思いますけど。現実をどんと突きつける!みたいな。でも私はどうせやらせてもらえるんだったらいい影響を与えたいんです。」
ー誰かこうなりたいとか目標にしている俳優さんとかいらっしゃいますか?
「こういう俳優さんになりたいっていうか…私は昔から渡辺謙さんが大好きで。「独眼竜政宗」の時から好きなんです。謙さんも演劇集団円の出身で、残念ながら一度も舞台は見たことないんですが、画面から伝わるパワーとかエネルギーがすごい!あと渋いですよね。それから香川照之さんも好きですね。エネルギーのかたまりみたい。すごいエネルギッシュです。」
ー海口さんは先程から、エネルギーと言う言葉をよくお使いになってますが、エネルギーは重要なものですか?
「重要ですね。誰々さんと話すと元気が出た、とか言うじゃないですか。テンションが高い…とは又別なんですが、そういう人になりたいですよね。そういう意味でエネルギーって大切なんじゃないかな。」
ー海口さんが最近見た作品のなかで印象に残ってる作品ってありますか?
「映画では「インセプション」見ました!面白かったですよ。」
ー謙さん出てますね。でも難しいお話だって聞きますけど?
「2回見に行きましたから(笑)すごいよかったです。ドラマだと「南極大陸」見てます。舞台は「大奥」見に行きました。衣装がすごかったですね。あと出演者がほとんど女性だからあれほどの女優さんが集まると本当に華やかです。」
ー海口さんは衣装も自分で用意なさるんですよね。以前花魁役をなさってましたがその時は?
「成人式のときの着物を使って自分で縫って衣装にしました。親に泣かれました…(苦笑)。衣装って別に凝らなくてもいいんだけど、やっぱり大事じゃないですか。見てる人にもやる方にとってもそう見えるか、そうなれるか。だからお金かかりますが、妥協しないですね。」
ーお芝居のレッスン、稽古ってどんなことやるんですか?
「何だって稽古ですよね。日常生活すべてが。今はしてないですが、ボイストレーニングだったり、体作る人もいますね。舞台が決まれば、本読みをして演技…立ち稽古・抜き稽古と言ってシーンごとの稽古に入って、あとは通し稽古。一幕から終幕まで稽古して、もう小屋入りで本番です。」
ー海口さんはどうして舞台に立とうと思うのですか?
「すべては舞台を見て楽しんでくれるお客様のためだと思ってます。見に来てくださるお客様がいるから支えてくれるお客様がいるからやっていけるんだと思う。どれだけ多くの方に支えてもらってるか…家族、見に来てくれる友達、一緒に作品を作り上げていく仲間。感謝してます。やりたくたってやれない人はたくさんいるから。震災のこともあって当たり前のことじゃないんだなぁと本当に感謝です。」
ーでは、この職について一番よかったことはなんですか?
「お客様からのアンケートとか読んだ時や、直接声をかけていただけたときですね。その舞台をご自身の気持ちとシンクロさせて見てもらえたりとか。以前、乳母役 をやらせていただいた時に育てた子を亡くすシーンがあった。乳母にとっては自分が育てた訳だから我が子も同然で。その舞台を見たお客様の中に年配の女性の 方なんですけど、娘さんを亡くされた方がいて…。「何年も前のことですが、死んだ娘のことを思い出しました。」って言われて…。そのときこの方の人生と私 の芝居が繋がった。すごいことですよね。全然知らない人ですよ。身近な人は褒めてくれますが、知らない方にそんな声をかけていただけるなんて…。本当に嬉しかったです。」
ーそれでは最後に海口さんのこれからの目標を教えて下さい。
「本当にお芝居がしたいし、お芝居に関わることをしたい。求められる人になりたいですよね。この役だったら海口!とか。その作品にも求められる役者になりたい。もちろんお客さんにも。」
ー基本は明るく、ユーモアたっぷりなのにお芝居のことをお聞きすると途端に真剣な目で真摯に語ってくれた海口さん。とても素敵な女優さんだと感じました。
今後の海口さんの活躍が楽しみです!ありがとうございました!!